中山真由美‘90
西町インターナショナルスクール
渉外開発室
(The Internationalist Fall/Winter 2021 Vol 67)

東京オリンピックのアナウンスのお話をオファーされたのはいつ頃でしたか?どの種目のアナウンスをしましたか?東京以外の場所に遠征しましたか?
オリンピックの最初のお問い合わせを頂いたのは2019年の2月でした。オリンピックではサッカーのスタジアム・アナウンスをさせて頂き、各所スタジアムで平行して試合がある中、私は札幌ドームでの10試合を担当させて頂きました。
今回、サッカーにご縁があったのは、2014年に初めてKirin Challenge Cup(KCC)のお仕事をさせて頂いたのがきっかけだったのかもしれません。80頁以上の台本打合せをしていてもディレクションをくださる方の言葉が全く頭に入らず真っ白に…本当に緊張すると、末端に血が通わなくなるみたいでカフ(自分の声を音声に通すスイッチやレバー)を上げる手が震えていたのを思いだします。その後、FIFAからの問い合わせが来たと事務所から連絡があり、ワールドカップの仕事もさせて頂くようになりました。それからはU-23国際試合、なでしこ戦、その他冠イベントなど、国内の様々なスタジアムでのお仕事をさせて頂く機会に恵まれました。
そんな流れがあり、2019年の2月にTokyo2020でのMC(アナウンス進行)のお話につながりました。
世界に自分の声がアナウンスされる、しかも生中継で、とはどんな気持ちでしたか?
実をいうと私が今まで関わってきているスタジアム アナウンスは日本語と英語の両方のアナウンサーがいて、基本的に国内試合では日本語がメインで、英語アナウンスの私はその後にテレコ(交互にアナウンス)でついていく、というのが流れです。選手紹介や国歌斉唱、ゴール、選手交代なども全て日本語リード。つまりかなり気持ち的にも楽なんです。それが、今回はオリンピックという国際イベントで英語アナウンスがメインでリードだと知った時のショックといったら(笑)もう動揺もいいところで、またまた数年ぶりにカフを上げる手が震える体験が待っていました。
でも今回一番うれしかったのは、アナウンス最終日終了後にFIFAのオフィシャルの方達から、ご挨拶をしたいとピッチまで呼んで頂き「Was that you?We were talking from the rehearsal that this venue's got a foreign announcer. Wow, what a surprise!」と興奮して話してくださったことでした。あんなにリハーサルからバタバタだった事や通常の代表戦とは全く違う段取りで、全員が張りつめていた事も吹き飛んだ瞬間でした。その時に「This is a small gift for you.」と言ってオリンピックの試合で選手が蹴ったボールをくださったんです。そのボールには今でも芝の緑色の跡があり青臭い土の薫りがします。
種目によってはかなりの長丁場になりますが、どのタイミングで水を飲んだり、トイレに行ったりするんですか?例えば、トイレ休憩に行って、次のアナウンスに間に合わない!っていう事あはありましたか?
アハハハ!!よくこんな質問を思いつきましたね。実は本当にあるんです、そういう状況。私は緊張するとお手洗いに行きたくなっちゃう性分なので、サッカーの時は頂いた台本に「GO PEE!」って自分で打ち込んでいます。こんな話初めてするので恥ずかしいんですが、私の書き込んでいる台本を理解してくださっているディレクターさんは「YUKOさん、 PEE TIME!」って数分のブレイクにも指示を出してくださいます。
長い種目などで、どうやって声を枯らしたりしないのですか?何かおすすめな事はありますか?
すみません、そこだけは分からず、です。先輩方にはプロポリス(注1)の高級な飴をプレゼントしてくださった方や、プロポリスの甘い喉スプレーをくださった方もいらっしゃいますがどうも私は繊細な声の持ち主ではないようです。
(注1)プロポリスは、ミツバチが木の芽や樹液、あるいはその他の植物源から集めた樹脂製混合物である。プロポリスは健康食品(サプリメント)や飲料としての利用が拡大し続けており、抗菌・抗ウイルス・抗炎症・抗腫瘍作用等を期待した病気予防・治療目的での服用が行われている。(Wikipediaから抜粋)
選手の名前の言い方をどうやって覚えるのですか?今回はどれくらいの時間を選手の名前の下準備に費やしましたか?
これだけはハッキリ言って大変です。本当にお国によって選手名の発音も違います。英語圏の代表選手だからと言って読みやすい選手名だけでなく帰化されている方もいます。アルファベット読みでは全く太刀打ちできない、例えばウクライナ、ホンジュラス、サウジアラビア他、などの選手もいます。
ちなみに準備時間は殆どありません。選手名リストが上がってくるのも2日前だったり、実際に現場に入ってから試合直前に届くスタメンリストの選手名や背番号が事前に頂いたものと変わっていたりすることも珍しくないので、いつもギリギリまで発音も調べています。もちろんそれは互いに戦略でもあるのでギリギリまで出せない情報だということは重々理解していますが、とは言えアナウンスブースは戦場になります。

アナウンスブースでのコロナ対策はどんなものがありましたか?
コロナが始まってからは、オリンピックの試合に限らずアナウンサーや映像関係と選手との動線は完全に分けられていました。オリンピックの時、私達はPCR検査を現場で数日に一度受けていました。スタジアムに入る前に毎朝検査が行われ、顔認証と自分の写真入りパスとを画面にかざし、同時に自動検温されていました。アルコールの除菌液は小さなスプレーボトルに入れていつも持ち歩いていましたね。
変な話ですが、私も日本語アナウンスのパートナーも、プロデューサーも毎晩(レストラン等には行かず)コンビニ食で頑張りました。もちろん、気を付けた上で少人数で短い時間であれば問題なく出られたんですが、どうしても万が一を考えると自分が運営側の皆さまにご迷惑をかけてはならない、という意識が働いたのは事実です。お陰で普段はあまりお世話にならないセブンイレブン、ファミリーマートや、AEONのコンビニ食やお惣菜、どこにタンパク質の多いおかずがあるかにもすっかり詳しくなりました。
今後は何か違うスポーツイベントで侑子さんの声を聞く機会はありますか?
すみません、そもそもスポーツに明るくなく、現在声の仕事で関わっているスポーツはサッカーくらいですね。ちなみにFIBA2019年(バスケットボール)の開催国発表式のMCはさせて頂きましたが、まさかテレビ放映されているとは知らず、娘のベビーシッターさんのご両親がフィリピンから送ってくださったTV映像に自分が映っていたのは衝撃でした。
ご縁があってラジオやイベントMCもさせて頂き、年明けからはまたサッカー日本代表戦のスタジアム・アナウンスが待っていますが、正直言うと「ナマ物」はとても苦手です。ラジオやイベントMCなど、スクリプトにない想定外の事が起きた時に臨機応変にトークをすることや、カメラの前で顔出しをするのもとても苦手です。ナレーターであればそういう事がないと思い始めたんですけどね。スポットライトを浴びて人前でトークができる方たちには本当に尊敬です!!
今回のこのインタビューのお話しを受けたのは、自分が西町の同窓生であったことの誇りと、松方先生への感謝の気持ちを表したかったからです。私が2年生の頃、母に連れられ日本の小学校へ転入試験を受けた際、西町での教育を続けるように両親を説得してくださったのは他でもない松方先生でした。「これからの日本を生きる未来の人たちはもっと国際色豊かにならないといけません。」と言ってくださったそうです。そのお陰で今こうしてサッカーのスタジアムアナウンス、キャノンやネスプレッソのようなTV広告の日英ナレーション、そして日本語のみのAXNやNissanなどでレギュラーのナレーションを依頼して頂けていることに感謝しています。いつか西町ファミリーの関わる企業や商品ブランドで、声のお仕事で関わることが出来たらステキですよね♪
